昨夜見た映画、今日読んだ本のレビュー。


by Erika_Akane

カテゴリ:和書( 15 )

人生の親戚 大江健三郎

大学で英文学を教えるまり恵には、知的障害児として生まれたムーサンと、事故によって身体障害児となった次男がいた。この2人の子供が同時に自殺した後、まり恵は小さな宗教団体に入り、やがてアメリカ→メキシコへ渡る。息子がムーサンと同じ学校に入っていた縁でまり恵と知り合うようになった作家Kは、まり恵の生涯を映画化しようという企画に携わる……。

「べティさん」というあだ名を持つまり恵さんは、単なる聖女にはならないし、見守るKも彼女をむやみに聖女化したりはしません。まり恵さんみたいな人が、こういう目にあったら、こういうふうに対処するだろうな……という現実感は、ものすごくあるような気がします。途中まで、本当の話そのままを書いているのに違いないと思い込んでいました。どんどん読める本です。

でも、読み終わった後、別に感動しなかったです――「救い」とか「癒し」とか文庫本の裏の宣伝に書かれていることも感じませんでした。個人的に、「『いやし』は、あまりにも90年代!」と思ってしまうためでしょうか。違う時に読めば、違う感想になるかも。

人生の親戚 amazon.co.jp
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by Erika_Akane | 2004-12-15 00:15 | 和書
ストリップ小屋→SMクラブの女王様と働いてきた忍お姉さんには、妹のように可愛がっている、ちかという友達がいた。小説など書いているように見えなかったちかが、新人賞をとり、さらに「大きな賞」をとる……。

あらすじは、あまり関係がありません。山田詠美の半自伝的小説。

山田詠美って、ほとんど読んだことがなかったんですが、これを読んだら、「えらい人や…」(←なぜか関西弁。「えらい」は何というか関西弁的な意味での「えらい」)と思いました。「あんなふうには生きられないなあ」(←Hana-biの中の台詞?)とも。

前半は確かに、当時うるさかったであろう世間に対する反論みたいな感じがする部分もあるんですが、後半の、ちかの修行時代の苦しみとか、男女関係における嫉妬の苦しみのあたりとか、心をえぐりとって、さらけ出しているような迫力。すごい。

ところで、ペニスに100本以上の針を刺さなきゃいけないM男性の話は、読みながら「ぎゃああああ」なのでした。そんなことって、出来るんですか?睾丸は無理ですよね……ぎゃあああああ。

ひざまずいて足をお舐め amazon.co.jp
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by Erika_Akane | 2004-12-04 04:06 | 和書
「400字づめにして8枚から14枚くらい」(著者によるあとがきより引用)のさまざまな短編・掌編をあつめた本。

これも、図書館にあったのを何の気なく借りてきて、ちょろちょろと読みました。村上春樹は、結構読んでいるせいか(最近のものは読んでないけど)、これが発展してあれになったのか……とかいうのが感じられる作品が多くて(というか、思わずそういう「種」みたいなのを探してしまうのかも)興味深かったです。

ちょっとした時間に、気分転換に読むのに最適かも。

カンガルー日和 amazon.co.jp
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by Erika_Akane | 2004-11-29 11:37 | 和書
広大な意味での「イコン(聖画)」を解読しようとする10の講義(風文体で書かれた書)。

恥ずかしながら、中沢新一という人については全然知らなかったし、その著書を読んだこともありませんでした。

これは、図書館の片隅にあったものを「何でもいいや」という感じで借りてきて偶然読みました。

で、びっくり!

とっても刺激的でエキサイティング。こういうの読みたかったんだよなあ~としみじみ思いました。(特に、漢字文化とアルファベット文化の違いって、頭というか、身体のどこかで感じているものの、こんなふうに書かれているのを読むことができたのは初めてです)

あと、日本語が読めてよかった、とも。これ、英語で書かれていたら、わたしの英語力では、わけが分からないと思います。というか、英語で読んでいる時と、日本語で読んでいる時って、脳の吸収のしかた(吸収する部分?)が違うような気がするんですけど――単に英語力のなさ?

中沢新一は、もっと読んでみたいと思ったのですが、果たしてここで(無料で←ケチだと自分でも思わずにはいられませんが…日本語本は高い!あとNYCのような場所ではないので、単に入手が難しいという話も)手に入るのかしら?

イコノソフィア 中沢新一 (紀伊国屋)
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by Erika_Akane | 2004-11-26 00:44 | 和書
結婚を前にした、昔から縁のある男女三人(そのうちの二人が結婚する予定)を描く「今夜だけ」。夫を操る妻を描く「午後だけの島」。妻を自殺に追い込む「夜のない窓」。夫が旅行中の妻のはかない情事を描いた「山雀」の4篇。

どの作品も、「そう見えたけれど、実はこうなの!」というトリックのようなものがあって読み進まずにはいられないのですが、うーん、わたしはこういうの駄目です。4編が4編とも、不幸・愛のない結婚か、複雑な男女関係で、みんなが欺きあっていて、男が女を叩いたり殴ったりするのって、読んでてがっくりきました。

「今夜だけ」は面白かったです。(しかし、このカップルはこの先が思いやられますねえ)あと、「山雀」は、じっとりと暗くてよかったです。
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by Erika_Akane | 2004-08-10 21:29 | 和書

蜜月  小池真理子

激しく、奔放に生きる天才画家、辻堂環の訃報を目にした6人の女たちが、それぞれ彼との恋を回顧する……。

6章から成り立つというか、6編の短編が集まったというか。新潮文庫で読みました。

一番ぎょっとしたのは、少し前に自殺した作家鷺沢萌による解説です。
以下、解説より引用。


好死不如悪活。―――好死は悪活に如かず。
好きなことばだ。
(中略)
誤解を怖れずに敢えていえば、彼あるいは彼女がどのように生きてきたか、それをもっとも判りやすい形で見せてくれるのがそのひとの「死に方」である、というような。


平成13年2月に書かれた文章です。なんかこう、hauntingだと思いません?
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by Erika_Akane | 2004-07-12 21:39 | 和書
週間朝日に連載されたコラム『退屈な読書』(1998.5.1~2001.12.29)を補筆、単行本化したものだそうです。

楽しく読みました。そして、とっても羨ましかったです。

こういう知識人がいて、いろんなものを読んでくれて(AVまで見てくれて)、いろいろなことを、分かりやすく紹介してくれる環境が羨ましかったのです。で、気になる本があったら、ささっと図書館に行くなり、本屋に行くなりして入手でき、それを読むことが出来るのって、いいですよね。

こっちにも、そういう知識人がいて、やはり分かりやすく紹介してくれていたりするのかもしれないのですが、なんといっても、英語は読むのに時間がかかるので、そうそう身軽に動き回れません。書評を読むこと自体だって、延々と時間がかかってしまうのですもの。英語本がいっぱいつまった図書館や本屋に行くと、本当に、深い森の中に立っているような気がします。

ちょっと検索したら、この本の中で取り上げられている書名一覧をまとめている人がいました。(偉い!)リンクはっておきます。
『もっとも危険な読書』で取り上げられている本一覧
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by Erika_Akane | 2004-06-24 21:29 | 和書
80年代から90年代にかけての文壇の寵児、村上春樹、俵万智、吉本ばなな、林真理子、上野千鶴子、立花隆、村上龍、田中康夫ら8人が、「どのように語られ、評され、報じられた」かを論じた本。

斎藤美奈子は、以前に『妊娠小説』を読んだことがあります。卒論執筆中で、アカデミック論文のつまらなさに、うんざりしていた時でしたので、それはもう楽しく読みました。

『文壇アイドル論』も、ニヤニヤしながら読ませてもらいました。この本の大部分は、ジムに持っていって、クロスカントリー・スキー運動機(勝手に命名)に乗りながら読んだので、はたから見ている人には、気味の悪い光景だったと思います。

8人のうち、立花隆と田中康夫は全く読んだことがないのですが、斎藤美奈子が引用している『文明の逆説』(立花隆)の部分、あまりのポリティカリー・インコレクトぶりに仰天、爆笑してしまいました。

「多淫な女、複数の男性を望む女は例外なく冷感症、不感症なのである。オルガスムス不全がニンフォマニアとウーマン・リブを生むといっても過言ではない。女性が真に解放されたいと望むなら、早くオルガスムスを味わわせてくれる男を見つけることだ。」(『文明の逆説』((『文壇アイドル論』からの、また引きです。ごめんなさい。本文の文脈が分からないので、単にジョークだったという可能性もあります。)))

ドン・チェリーDon Cherryも真っ青ですね……。(ドン・チェリーは女性攻撃はしないようだし)
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by Erika_Akane | 2004-06-11 21:38 | 和書
女性の名前の22章からなる22人の女性の物語。それぞれの人物、物語は緩くつながっている。

シュール好きのわたしですが、これはちょっとピタっとこなかったです。(特に中盤。単に飽きちゃったのかもしれないけど)

女性たちの名前は、イオとかテティスとかリムナエアとかニオベ…で、メアリとかエリザベスのようなアングロ名じゃないところ、多和田葉子なのでした。
本文よりちょっと抜粋。

「形容詞こそが大切、名詞はどうでもいい。レダに細い友達がいたら、大切なのはその友達が細いことであって、それが友達であることは、どうでもいい。レダの知り合いには、教養高いのや、脂肪で肉の柔らかくなったのや、休暇中のや、石灰みたいなのがいる。彼女たちは、芸術家でも、母親でも、納税者でもない。」

抜粋部はそうでもないですが、ここまでくると散文詩を読むよう。でも、中間部あたりに「わたしはこれこれについて怒ってるのよ」みたいな、昇華されきれないままの思考や感情も見えて、今一つ…。
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by Erika_Akane | 2004-06-03 21:04 | 和書
トルコ人と結婚する姪、流美の結婚式に出席するため、津和野の陶芸家、熔子はイスタンブールへ出向く。ところが流美は失跡。流美の婚約者ムラットの生家で、熔子は16世紀に消滅したはずのイズニク・タイルによく似た強烈な朱赤のタイルを見せられる。ムラットの兄で陶芸家のケマルが再生に成功したものであった。流美の結婚計画が、ケマルの技術を盗むためであったのかもしれないことに気付いた熔子は、影で糸をひいていた男、波残と対面する。彼は、熔子の昔の恋人でもあった…。

あらすじをまとめようとして、「いやはや、複雑な話だったんだなあ」と思いました。読んでいる最中は、あまりにもスイスイと読めて物足りない感じだったのに…。これって、よく練って書かれている証拠でしょうか?

髙樹のぶ子は、昔『光抱く友よ』を読んだことがあり、本書も地味地味の純文だろうと予想していたのですが、上品めの熟女向けロマンチック・エロティカという感じで、びっくり。

でも、「上品めの熟女」って、やっぱりイスタンブールくらいエキゾチックなところへでも行かないと、「やりまくり」みたいなことは出来ないのでしょうねえ。

どうでもいいのですが、いとこ同士のセックスって、わたし的には血が濃すぎる感じがします。あと、伯母・姪の両方と肉体関係を持っちゃうとかいうのも。(『源氏物語』なんかもそうですが、想う人の血縁って、そんなにいいのかな…よく分からない世界です)

舞台は広いのですが、登場人物たちの関係が異様に近くて息苦しいというか、ちょっと抵抗がありました。
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by Erika_Akane | 2004-05-09 08:45 | 和書