昨夜見た映画、今日読んだ本のレビュー。


by Erika_Akane

カテゴリ:洋書( 36 )

Eleanor Rigby by Douglas Coupland

バンクーバー在住、肥満、30代後半、独身のリズ・ダンは、lonelinessの中に生きていた。そんな彼女のもとに、病院から電話がかかってくる。ODで収容された若い男性がはめていたブレスレットの連絡先がリズだったという。それは、彼女が20年前、10代で妊娠した時に養子に出した息子ジェレミーだった……。

カナダの代表的若手(でいいのかな?)作家ダグラス・クープランドの新刊を読んでみました。

もうちょっと粗筋を紹介したほうがいいのでしょうが、気をゆるめていると、とんでもないことが起こる展開になっています。(ある時点で、リズ・ダンは世界で7番目((だったかな?))に忙しい空港を閉鎖、刑務所入り!)ネタバレすると楽しくないかも。

とっても読みやすい文体(ウィッティな比喩とか、ユーモア感覚とか、なんとなく村上春樹的な感じ)ですが、「神と人類」とか、「人間の存在」とかについて、いつの間にか考えさせられてしまいます。

Eleanor Rigby amazon.com
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by Erika_Akane | 2005-02-27 11:05 | 洋書
講演のためにパリを訪れていたハーバード大学教授ロバート・ラングドンは、夜中、フランス人刑事に叩き起こされる。その晩、ラングドンと会う約束をしていながら現れなかった、ルーブル美術館の学芸員長(っていう肩書き?偉い人)Jacques Sauniereが、美術館の中で殺害されていたという。死に至るまでの数十分の間に、Sauniereは自らの身体と血を使って、不可解なメッセージを残していた……。

話題になっていた『ダ・ヴィンチ・コード』、何となく乗り遅れてすねていたのですが、Special Illustrated Editionなるものが出たので、図書館でゲットして読みました。もしまだ読んでいない方がいらしたら、このバージョンは本当におすすめ。「モナリザ」、「最後の晩餐」から、ルーブルのピラミッド、Cilici BeltというOpus Deiの僧が使う、自らを痛めつけるための装具まで、痒いところに手が届くように、綺麗な写真で見せてくれます。(かなり重たいので、ベッドで読むのは結構辛いですが)

教養たっぷりのエンターテイメント!です。真剣なキリスト教徒(特にカソリック)か、真剣なPaganのほうが、のめりこめると思いますが、なんとなくな仏教徒でも十分に楽しめました。最後まで読むと、作者はアンチ・クライストとかではなく、ごく良識的な基盤に立っているのだな~というのも伝わってきます。

ストーリー的には――ソフィーがお祖父さんと10年間も絶縁状態になった理由が弱いのが難。(フランス人って、そういうのには寛容なんじゃないの?って偏見でしょうか…別にフランス人じゃなくても、今時、そーんなに潔癖な若い子が…)

トム・ハンクスがラングドンを演じる映画版も楽しみなのですが、本を読まずに映画を見ても分かるような作りになるのでしょうか?この本では、面白げな知識の詰め込みを受けるところに悦びを感じたのですが、それって、映画ではどうするの??と興味が尽きません。

The Da Vinci Code ~Special Illustrated Edition~ amazon.com
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by Erika_Akane | 2005-02-21 09:15 | 洋書
パリ・オペラ座の怪人は実在した……「わたし」が、関係者の証言や随想録を引用しながら描き出す、オペラ座の怪人の恋と最期。

映画を見た後、どうしても気になって、「駄作」よばわりされている原作を読んでみました。旅行にいったり、その前後の始末でなかなか読書の時間がとれず、200ページの薄い本なのに、読了までに時間がかかりました。

かーなり時代かかっていて、話に入りにくいし、やたらに爆発(しそう)な、かつ引き伸ばす冒険談があったりして、「駄作」よばわりされるのも無理はないのですが、「いいとこ」はかなりよくて、本を置くことが出来ない部分も。

酷評が多い映画版のレビューで、笑ってしまうのが「怪人がハンサムすぎる」というもの。確かに映画の怪人は、マスクをしているかぎり、ラウルよりハンサムだし、マスクをとっても「あなた、自意識過剰なんじゃないの…」という感じなのですが、原作では本当に醜い!!(といっても見えるわけじゃないんですが、ほんとに醜くて恐い感じ。あまりにも醜いので実の母親にキスされたこともなかった――って、醜さとその悲しみがにじみでてません?)

I will play you Mozart, if you like, which will only make you weep; but my Duan Juan burns, Christine; and yet he is not struck by fire from Heaven.  (中略) You see, Christine, there is some music so terrible that it consumes all who approach it. Fortunately, you have not come to that music yet, for you would lose all your pretty coulouring and nobody would know you when you returned to Paris. (page 95)

映画かミュージカルで出てきたかどうか覚えてないのですが、怪人の名前はErik。自分のことを、「誰もErikの素顔を見ることはないのだ」とか、3人称で語ってしまうあたり、ちょっと笑えます。でも、怪人の苦悩・悲しみは、やっぱり本が一番よく味わえるような気がします。

クリスティンに結婚の承諾をさせた後(一応、彼女に選ぶ権利はあるのだけど、Noの場合、ラウルはもとより、オペラ座にいる観客たちが大爆発の犠牲になるという条件って…)、彼女に初めて(というか、生まれて初めて女性に)キスするあたり、涙なしでは読めません。

わたしが読んだのは、「wordsworth classics」の英訳版。(訳者の名前が見あたらないんだけど…なんなの、これ?)アマゾンには見当たらないのですが、表紙の絵が本で描写される怪人に似てるので(鼻がなく、痩せこけていて背が高い。昼間は目は穴のように見えるが、暗闇の中では猫の目のように黄色く光る)、ここにリンクをはっておきます。

The Phantom of the Opera amazon.com
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by Erika_Akane | 2005-02-09 00:02 | 洋書
エジプトのピラミッドに宝物が埋まっているという夢を見た、スペインの羊飼いの少年サンチャゴは、不思議な王の助言を受け、宝物を手に入れるための旅に出る……。

世界各地で読まれているブラジル作家によるベストセラーをAlan R. Clarke + Paulo Coelhoの英訳で読みました。(日本語題は『アルケミスト』)

文学として読むと、lame…。(Alice Munroの後だったからかもしれません。ひねくれた個人の見解です)途中から、「これはセルフ・ヘルプ本」というカテゴリーで読みすすめました。

セルフ・ヘルプ本として読むといい感じではありますが、フェミニストは腹を立ててもよくないでしょうか??わたしはフェミニスト・フェミニスト的見解はしないほうですが、この本に出てくるファティマ(サンチャゴが恋に落ちるオアシスの少女)の扱いにはびっくり。

少年の「宝物」はピラミッドに埋まっていて、それを手に入れるために大冒険を続けるのですが、少女の「宝物」は「彼女を見つけ出した少年」であって、後はひたすら彼が帰ってくるのを待たなきゃいけないって……。「砂漠の女」とかなんとか言ってはみても、これって結局、男にとっての「都合のいい女」ではないでしょうか。

繰り返されるテーマというか、頻出フレーズは、
Follow your heart
When a person really desires something, all the universe conspires to help that person to realize his dream. (本文引用)

ということで、人生に行き詰まりを感じた時、迷いを感じている時などに読むと、元気の出る本だと思います。

Alchemist amazon.com

アルケミスト amazon.co.jp
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by Erika_Akane | 2005-01-16 13:04 | 洋書

Runaway by Alice Munro

結婚生活に疲れ、ふとしたことから家出を企てた若い女性を描いたRunawayをはじめ、カナダの(やや)田舎、やや昔を舞台にした8つの短編集。

↑無茶苦茶なまとめでごめんなさい!(短編の粗筋まとめって難しくない?)

この短編集は圧巻です。どの物語も淡々としていながら、最後にはものすごく暗いというか重いものが感じられます。Runawayなんて、最後のところで「うおう、やられた!」と呆然としてしまいました。別にトリッキーなストーリー展開なのではなく――はじまりは地方在住主婦地味地味真っ当短編みたいだったのに、この異様な暗さは何?!という衝撃です。ファンになりそう。

Alice Munroは短編の名手として名高く(カナダのチェーホフとかいわれている)、カナダでは文壇の大御所です。カナダでちょっと本を読む人なら、まず間違いなくAlice Munroの名前は知っているというところ。様々な賞も獲っています。

ところが、インターネットでちょっと探したところでは、日本では『木星の月』くらいしか翻訳が出ていないようです。そんなのってありなのか…とびっくりしました。(といいつつ、わたしも、Alice Munroをちゃんと読んだのはこれが初めてだったのだけど)地味すぎるのでしょうか?風土がにじみ出ていすぎるのでしょうか?

Runaway  amazon.com
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by Erika_Akane | 2005-01-06 04:54 | 洋書

So This Is Love by Gilbert Reid

民族間の抗争が続くボスニア。重傷を負ったイスラム教徒の兵士と、盲目の若いセルビア人女性が、物資不足の病院の片隅で一緒になる……Pavilion 24の他、イタリア、パリ、カナダなど、様々な地を舞台にした、様々な「愛」を考える8つの短編。

Pavilion 24、Soon We Will Be Blind(オンタリオ州の農場における、語り手の少女時代に起きた暴行未遂事件の回想)、Hey, Mister!(戦争カメラマンの体験)、The Road Out of Town(育った町を訪れた語り手が、少年時代に起きた不幸な少女の失踪を回想)が、よかったです。Pavilion 24は特に迫力と悲しさ、絶望感満点!これだけ変化にとんだ舞台設定が出来るのってすごいですねえ。

それにしても、映画・ラジオ・TVのプロデューサーで、外交官(?)としてロンドンやローマで働いたことがあり、経済学者(?)としてパリで働き、シシリーでは大学講師をし、様々な映画祭の審査員もしてきた……という、すさまじくマルチ・タレントな作者Gilbert Reidの経歴って、一体???

So This is Love 出版社のサイト
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by Erika_Akane | 2004-12-20 11:26 | 洋書
ゲイ+吸血鬼+コスチューム・デザイン兼製作屋の「わたし」は、カントリー歌手で、素晴らしいお尻をしているハンクに、無料で衣装を作ることを提案した。「わたし」は、ハンクを大スターにする一方で、さまざまな策略をめぐらせて、ハンクを孤立させ独占しようとする。ハンクは愛する人々を失い、酒に溺れ、薬に溺れ、破滅していく……。

大きな活字で120ページ足らずの短い小説です。

カントリー歌手ハンク・ウィリアムズを知っている人なら、この話は、彼の生涯を下敷きにしているのだな……と思うはずです。元の奥さんの名前がオードリーだし、29歳で車の中で死んでしまうのもハンク・ウィリアムズと一緒です。

それから、オンダーチェファンも、「むむむ、このスタイルはオンダーチェっぽい…」と思うのではないでしょうか。(アマゾンのレビューにもそんな感じのことが書いてありますが)

とにかく変わっています、この本。「すごくいい!」とは個人的には思いませんでしたが、退屈している時に読んで損はしない感じ。衣装はゲイなんですが、バイオレントで、どす黒い。

「吸血鬼」が出てきちゃうのって、何よ?!だったのですが、

“I can make you immortal, Hank. Wouldn’t you like to live forever?”

というところで、なるほど…と思いました。ここでの「ヴァンパイア」って、「有名になることの代償」みたいなものなのかも。(あくまで個人的解釈です)

Haunted Hillbilly amazon.com
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by Erika_Akane | 2004-12-16 04:37 | 洋書
くよくよ思い悩んで前に進めない、あるいは、思い悩んで決断して行動したものの、何だか間違えちゃったような――そういう経験のある女性たちと、そういう女性を理解したい男性たちのための本。

今年読んだセルフヘルプものの中では一番よかったです。

要するに、くよくよと考えすぎ(over thinking)ていると、よく考えているつもりでも、視野が狭くなったり、自分の中の極端なムードに影響されたりして、一番効率的な解決策や打開策をみつけることができず、損である。だから、over thinkingに入ったなと思ったら、とにかくそれを打ち切り、気分転換をしたり、ブレインストームをしたり、いい友達や専門家の意見を聞いたりしよう……というものです。

女のお医者さんが、理性的に、辛抱強く語りきかせてくれているようでした。年配の女性たちの世代では、over thinkingが少ないという興味深いデータも。近年、社会的に女性の地位が大変動してきたのも、現代女性にover thinkingが多い一因なそうです。

いろいろ気にしすぎる男性にもお勧め。

Women who think too much amazon.com
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by Erika_Akane | 2004-12-10 03:01 | 洋書

Some Great Thing by Colin McAdam

漆喰工から叩き上げで、土地開発業界に君臨するようになったジェリー・マッギンティーの、若く貧しい日々、アイリッシュ移民キャサリンとの恋、苦悩の結婚生活、商売の拡大、息子との問題……。一方、国会議員の息子であり、連邦政府の首都土地開発計画部(?)で働くサイモンは、仕事場で情事を重ねていた。ある意味で、反対の立場からオタワ郊外の開発に関わった人間たちの生き様を描いた作品。

いい加減な粗筋紹介ですみません。

この二人の人生の関わりあいかたが、(特に後半で)非常に絶妙です。開発業者と、彼らに許可を与える役人という立場上での関わりはもちろんなのですが、それぞれの人生における問題の重なりかたがすごい。

「生き方」における指針や態度が全然違うのにも関わらず、人間って、根本のところで、やっぱり同じような問題にぶつかるのだろうか……(色々な意味で、手に入らないものを追いかけますか?)と思わされました。(サイモンとキャサリンは特に手に入らないものを追いかける人々のような気がします)

ジェリー・マッギンティー(父)が、とっても活き活きとしていて魅力的です。

今年の初めだったでしょうか、質の高いデビュー作ということで、カナダ文壇で話題になっていた本でした。

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by Erika_Akane | 2004-11-22 11:40 | 洋書
自分に限界を作っているのは自分――自分には何でも出来ると自らに言い聞かせることによって、何でも出来る!ポジティヴ思考による自らへの語りかけがあなたを成功させる!という自己開発本。

自己開発本に対しては皮肉で懐疑的なわたしですが、読んでいるうちにほだされてしまったような気がします。(ポリアンナの善良さと健気さにほだされた頑固老人的気分)

Helmstetter氏は、人間の脳をコンピュータにたとえているのですが、この人のコンピュータには、ハード・ドライブという概念がありません。(モニター、キーボード、ソフトウェア(←この部分を変えさせすれば万事大丈夫という主張)のみ)そんなものを信用していいのかー!と思うのですが(わたしが読んだのは1986年の版)、そこをポジティブ思考で乗り切ると、あなたは限界など知らない、素晴らしい人間になるのです!!

皮肉な調子になってしまいましたが、これはいけそうな自己開発法だなと思いました。読んでいると、My wayを歌うフランク・シナトラかという気分になってきます。とりあえず元気が出てきます。

この本の日本語版らしきもの(表紙に見える原題は、これですよね)を日本版アマゾンで見つけたのですが、目次が全然違うのにびっくり。あと、原本では「3週間」とかは、言ってないような気がするんですが……。こういうのって、北米と日本では、文化的にもいろいろ違うので、訳の際に手を加えるのでしょうか?(原文は、それはもうアメリカン!!という感じ。フランス人とかはどう思うの?)

What To Say When You Talk To Your Self Amazon.com

What To Say When You Talk To Your Self 日本語版
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by Erika_Akane | 2004-11-04 03:56 | 洋書