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昨夜見た映画、今日読んだ本のレビュー。


by Erika_Akane

光とゼラチンのライプチッヒ  多和田葉子

表題作他に短編8作と戯曲が1作入っています。

とにかくシュール。夢の中のような、あるいは、夢を作る工程を見せられているような感じがします。

ハローハローと言いながら、十五歳くらいの女の子が店の奥から飛び出してきた。お土産は悲しい。女の子の顔には、真剣さも陽気さもある。こんなに悲しいお土産を毎日売っているのに、どうして顔に観光客の靴の後が付かないのだろう、と和子は後ろめたさを胸にもやもやと切り立たせる。……「チャンティエン橋の手前で」より引用

入っていけなくてもおかしくない世界なのに、むんずと掴まれて引きずり回されてしまうようなものすごさ。絵画や映像のシュールレアリスムってかなり好きなんですが、言葉でこういうことが出来るなんてすごいです。

これ、わたしにとっては日本語だから楽しく読めるのであって、もし英語で書かれていたら、ぜんぜん分からないだろうと思います。

「転向」→「ころぶ」という言葉と、セクシャリティーの危うさ、いい加減さ、危険さをフード・プロセッサーにぶち込んだような「ころびねこ」が一番好きなかな。でも、どれも面白い。

多和田葉子公式サイト
by Erika_Akane | 2004-04-27 22:25 | 和書